ベンガラ職人を訪ねて
- 2020.12.14レポート研修・体験
2020年12月10日
その人のことは、秘かに、貧乏神と思っていました。
そして、15年ぶりに会ったその人は、・・・仙人になっていました・・・
15年前、その人、中島留彦氏は、大正紡でアルバイトをしていました。
その他、ガードマンやバーテンダーなど、アルバイトで日銭を稼いで、弟子を養っていたのです。世界遺産、百舌鳥古市古墳群のある羽曳野市
15年前、ナカジマ㈱は、ベンガラ塗りからベンガラ染めへの過渡期を迎えていました。ベンガラとは、酸化鉄のこと。
古来より、防虫・防腐の効果、耐候・耐久の機能性から寺社や家屋の塗料として使われてきました。
中島家も先代の頃から、ベンガラ塗装を家業としてきました。
しかし、時代の流れとともに、時間と手間のかかるベンガラ塗装をする家屋は減少して行きます。そして、決定的な転機は、阪神淡路大震災後に訪れます。
従来の工法よりも耐震性を確保できるツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)という、面で構成する家屋の建て方がどんどん取り入れられるようになり、ベンガラ塗装の出番はどんどんなくなって行きました。
身体にも環境にも負荷をかけないベンガラ。
無くしてはいけない文化だという強い思いで、中島氏は、ベンガラを決して捨てませんでした。
ベンガラ塗装が衰退していく中で、ベンガラを塗料としてではなく、染料として活かす道を模索したのです。染料とするからには、赤一色というわけにはいきません。
ここから、中島氏のベンガラ染料の開発がはじまります。
今、「古色の美」と名付けられた天然染料ベンガラは、23色。
暖かく深い色合いを出しています。消費者は、安全・安心を商品に求めるようになり、繊維の安全証明であるエコテックス🄬認証を取っていたことがあるベンガラへの関心は高まっています。
専門家や芸術家はもちろん、趣味の染め物を安全安心なもので、子どもと安心して染め物を楽しみたいというニーズからベンガラ染料を求める個人も増えています。そして、大正紡績も、オーガニックコットンをベンガラ染めした、安全安心で豊かな色合いの糸を製造しています。
今、「古色の美」と名付けられた天然染料ベンガラは、23色。
暖かく深い色合いを出しています。15年ぶりに会ったその人は、白く長いひげを蓄えた仙人のような外見でした。
でも、鉄の燃えるが如く、その人の心はずっと、ベンガラ一筋でした。
SDGs委員会 坂口